夏の庭 2

 老人の家は、まるで手入れというものがされていないようだった。家の奥までは見えないけれど、もうすぐ7月だというのに、老人はコタツに入っている。雨ばかり降ってちっとも暑くならないせいだろう。

 木山、デブの山下、眼鏡の河辺の三人トリオはブロック塀に身を隠しながら、老人を見張っていた。

 河辺の父親は、彼がまだ赤ちゃんの時に死んでしまった。河辺は父親についていろいろなことを言う。ある時は野球選手だと言ったし、ある時は小説家だと言い、ある時は飛行機のパイロットだと言った。その度に僕たちは「またはじまった」と思うのである。

 老人を見張るスケジュールの打ち合わせを3人でする。月曜から金曜までは塾に行く前、土曜は山下は家業である魚屋の手伝いがあるのでパス、その他の2人は、スイミングが2時からだから、そのあと。日曜はその日に決めることになった。

 それから何日通っても老人(おじいさん)はいつもコタツに入ってテレビを見ているばかりだった。

 もしかしたらおじいさんはテレビをつけっぱなしで死んでいるのかもしれない、コタツに入ったまま。

 山下が老人の見張りをやめて帰ろうと言ったが、誰もそれに反応しない。もう一度庭覗きこもうとした時だった。僕たちのいるすぐ脇の玄関の扉が開いた。

 3人は悲鳴を上げた。僕たちは一目散に、それこそ全速力で走っていた。

 その後も僕たちは根気よく「探偵」を続けた。おじいさんがちゃんと生きていること、生活に関する行動などを掴むことができた。根気と時間がいる割に、退屈な仕事だ。