秋葉原無差別殺傷事件についての空想アレンジ

自分の存在を時々確かめないと風景・景色という空間とやらに自分が吸収されているのではないか、と思う時がある。人が1人亡くなることなど、その人自身にとってみれば一大事だが、世情として見れば瑣末な出来事にも満たないだろう。

存在しているという実感がまるで沸かない。では他者の存在を奪取することによって、自分の存在を示せばよいではないか、自分の中に越えてはならぬ壁があったが、その壁を自らの手で壊そうと思い始めたのはこの頃だった。


大学卒業後鉄屑リサイクル会社に就職したが、他の同僚との折りも悪く、入社して1ヶ月足らずで辞めた。それからも派遣やアルバイトで職を得るもどれも半年と持たなかった。気づけば無職になっており、貯金も底を尽き、明日の飯を食うに困る窮状に陥っていた。独身、24歳、まだまだいくらでもやり直しが利く若造である加藤だったが、この世間に嫌気がさしていた。


上京したのはいいが、これほどまでに孤独感が募るとは露ほどにも知らなかった。日雇いの仕事を斡旋してもらって稼いだ金銭で、牛丼屋チェーン店吉野屋に入った。アパートは家賃を継続して滞納した影響で立ち退きを余儀なくされていた。日中の気温は40度近くにもなる酷暑日が続いている。アスファルトは照り返しが強く、立っているだけで蒸し焼きになりそうなうだる暑さだ。それにも関わらず加藤の心は冷え切っていた。


店員が牛丼を持ってきた。丼からは湯気が立ち上り眼鏡が一気に曇った。眼鏡を外し無造作にそれを手で拭くとかけ直した。眼鏡が曇る原因である湯気は、拭けば元に戻るが、俺の人生は拭いても拭いても拭ききれないほどに曇っているではないか。最近俺は、嬉しい思いをして少しでも笑ったことがあるか。いや、全くない。そう思うと涙が出そうになったが、出なかった。あまりに虚し過ぎて涙腺に栓がしてしまったみたいだ。加藤は、牛丼を胃の中に流し込むと会計を済ませ、うだる暑さの中に身を乗り出した。


もう全てがどうでもよかった。別に死刑になってもいい。ただ、自殺だけは回避したかった。少しでも俺の存在を世間に示しつけてやって、法の裁きを受けて死んでやるのだ。自殺なんぞ、負け犬がすることだ。せめて死ぬ時ぐらい目立って死んでやる。明日、前々から思い描いてきた事を実行しよう。秋葉原でー。


自分の存在を時々確かめないと風景・景色という空間とやらに自分が吸収されているのではないか、と思う時がある。人が1人亡くなることなど、その人自身にとってみれば一大事だが、世情として見れば瑣末な出来事にも満たないだろう。

存在しているという実感がまるで沸かない。では他者の存在を奪取することによって、自分の存在を示せばよいではないか、自分の中に越えてはならぬ壁があったが、その壁を自らの手で壊そうと思い始めたのはこの頃だった。


大学卒業後鉄屑リサイクル会社に就職したが、他の同僚との折りも悪く、入社して1ヶ月足らずで辞めた。それからも派遣やアルバイトで職を得るもどれも半年と持たなかった。気づけば無職になっており、貯金も底を尽き、明日の飯を食うに困る窮状に陥っていた。独身、24歳、まだまだいくらでもやり直しが利く若造である加藤だったが、この世間に嫌気がさしていた。


上京したのはいいが、これほどまでに孤独感が募るとは露ほどにも知らなかった。日雇いの仕事を斡旋してもらって稼いだ金銭で、牛丼屋チェーン店吉野屋に入った。アパートは家賃を継続して滞納した影響で立ち退きを余儀なくされていた。日中の気温は40度近くにもなる酷暑日が続いている。アスファルトは照り返しが強く、立っているだけで蒸し焼きになりそうなうだる暑さだ。それにも関わらず加藤の心は冷え切っていた。


店員が牛丼を持ってきた。丼からは湯気が立ち上り眼鏡が一気に曇った。眼鏡を外し無造作にそれを手で拭くとかけ直した。眼鏡が曇る原因である湯気は、拭けば元に戻るが、俺の人生は拭いても拭いても拭ききれないほどに曇っているではないか。最近俺は、嬉しい思いをして少しでも笑ったことがあるか。いや、全くない。そう思うと涙が出そうになったが、出なかった。あまりに虚し過ぎて涙腺に栓がしてしまったみたいだ。加藤は、牛丼を胃の中に流し込むと会計を済ませ、うだる暑さの中に身を乗り出した。


もう全てがどうでもよかった。別に死刑になってもいい。ただ、自殺だけは回避したかった。少しでも俺の存在を世間に示しつけてやって、法の裁きを受けて死んでやるのだ。自殺なんぞ、負け犬がすることだ。せめて死ぬ時ぐらい目立って死んでやる。明日、前々から思い描いてきた事を実行しよう。秋葉原でー。