1巻その一 社長は、会社の一番の権力者じゃない!

 怒突ビルメンテ従業員田村は、明日自動車免許の更新があり、会社を休みたい。西村主任にそのことを伝え了承を得たが。

 翌々日、田村は出勤すると無断欠勤扱いになっていた。社長は「そんなこと聞いていない」の一点張り。主任がどうやら伝えることを忘れたらしい。社長が主任に確認を取るも、主任は自身のクビを免れるため、田村から休みを取るとは聞いていないと弁明。

 結局、田村は会社をクビにされた。会社の理不尽な規則に則り退職金はおろか、今月分の給与さえ支払われなかった。 

 その夜、田村はスナックで酒を飲んでいた。そこへ初老の紳士が現れた。スナックのママから事情を知った紳士は、懐から筆と原稿用紙を取り出し何やら書き始めた。書き終った用紙を封筒に入れ、会社の所在地と名称を聞き出し、「これを郵便局に行って、内容証明で出しなさい」と告げ、その場を去った。

 翌朝、田村は、紳士から言われたことを思い出し郵便局に行き、預かった封筒を内容証明で出した。数日後、田村の下に、配達員がやってきて、書留郵便を渡した。中を確認すると、なんと今月分の給与明細と給与が入っているではないか!

 あの初老の紳士は、何者なのか?