人間って

 しょうもないこと、興味のないことを毎日長時間やらされていたら、自分が本当にしたいことや興味のあることが分からなくなってくる。晴天だったのに、次第に厚い雲に覆われ、しまいには濃霧まで発生して、視界が見えなくなるのと一緒だ。目標に掲げていたものがやがて分からなくなり、今、私は何処へ向かって船を漕いでいるのだろうかと思う。


 現在の仕事がそうかもしれない。苦痛に思えば思うほどにそれが増してくる。正直、パチンコの解体なんてどうでもよい。辞めたいけれども、本能的には辞めない方が今のところ得策であることを知っている。仮に、家族が居なかったたら、即辞めてるだろう。やはり、家族の存在が大きい。


 他の人たちは、どうして淡々と作業をこなすことができるのだろうか?職業を馬鹿にするのは良くないが、囚人並みの労働である。


 作業場には、利用者の他に職員が4,5名ほどいる。その中に気に食わない職員が1名いる。(仮名)北川千佳子だ。そ奴だけほとんど何の作業もせずに、ほとんど見てるだけである。こっちは作業しているのに傍では立ったまま、作業してる人たちを見ているだけである。何かよく分からないが、憤りのようなものを覚える。それに加えて、他の職員と話をしていることもある。仕事上での話なら仕方がないが、こちらは黙々としている分、不思議と腹が立つ。


 たまにこんなことを思う。最低かもしれないが、北川が階段から転げ落ちて大怪我でもしないかなとか、ここでの仕事を辞めてくれないかとかである。他の職員はなんとも思わないが、北川に関しては、無性に腹が立つ。やはり、仕事上での立場や性格、価値観などから来るのだろうか?


 ブルーハーツのある曲の歌詞の中に「いい奴ばかりじゃないけど悪い奴ばかりでもない」というフレーズがある。本当にその通りだと思う。人間にはいろいろな人がいる。自分が嫌いな人、好きな人、具体例を挙げると切りがない。そんな中でも上手い具合に世を渡っていかなければならない。


 人間の存在是すなわち、妖怪と同じだ。ある人には虐げ、ある人には媚を売る。態度が一変する。今まで笑っていた人が、急に怒ったりする。人間の態度や感情はちょっとしたことで豹変する。これは、妖怪と同じではないかと思う。この世で人間ほど、恐ろしい生き物はない。だって、同じ人間同士で殺し合ったりしているくらいだから。